11.働き方が変わる!

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勤めていた会社が突然スウェーデン企業の傘下に。スウェーデン人やその他の国の人たちと一緒に働いて感じたことを記事にしています。
各人のジョブロールは既に明確に定義されています。ジョブディスクリプションは世界共通です。シスターサイトエクスチャンジプログラム(SSEP)の経験で自分と同じような業務を担当している人が他の国にも存在していることも分かり人的ネットワークが広がってきました。ついでに言えば仕事は英語で行っています。
このようなことから働き方の自由度が増して、いろいろなことが可能になってきました。働き方が変わります。
スーパーフレックス
フレックスタイム制度は日本の職場にも以前から導入されていましたが、コアタイムを無くし自由度が増したスーパーフレックス制度に変更になります。1日最低1時間働けば出勤扱いです。リモートワークも導入され、導入初期の週1回許可制からコロナ架では強い推奨へと変化しました。
例えば金曜日の朝早く1時間自宅でリモートワークして、それから同僚達と2泊3日の温泉旅行に行っても金曜日は休暇扱いとはなりません。とにかく月に160時間(8時間*20日の場合)働けばOKなのです。(早朝、深夜の制限はあります。)
残業と収入のジレンマ
それまで日本ではハードワークが美徳で、遅くまで事務所に残っている人が偉くて、そして残業代は労働者の重要な収入源でした。職場でよく会話された笑い話のひとつに「二人のプログラマーAとB」の話があります。
優秀なプログラマーAは毎月定時間内で品質のよいプログラムを10本作ります。一方でプログラミングが苦手なBは10本のプログラムを作るのにいつも必死で40時間ほど残業します。しかもBの品質はいまひとつ。でもBは残業代をもらうので収入はAより多くなります。仮に毎年の評価でAとBに差を付けたとしてもこの収入差を逆転させるまでは何年もかかりそうです。
会社全体の毎年の総労務費にはもちろん残業代も含まれています。残業代は割増なので会社はこの割増労務費をたくさん支払っていることになります。たぶんこのAとBの状況を変化させAが残業してプログラム本数を増やし、Bは本数を減らしても定時間のみの労働とする方が全体の生産性は高まりそうです。
仮に全員が定時間労働のみで働くと会社全体の総労務費が下がるので昇給や人員増の原資となりそうです。従業員から見てもワークライフバランスが改善され良い暮らしができそうです。
そもそも日本のIT部門で働く自分たちには残業が日常でした。一方でスウェーデン人はほぼ残業をしません。効率性を高めることにいつも注力していて高い生産性を求めます。ついに日本人の残業を削減する試みが本格的に始まりました。
残業を減らす1(「え、もう帰れるの?」)
笑い話のようですが「え、もう帰れるの?」の言葉の禁止、実際によく聞かれた言葉です。自分のノルマを終えた従業員が夕方帰宅しようすると誰か(特に上司やリーダー)から言われます。冗談半分の感覚ではあるけれど、この言葉で身震いし翌日からは先に帰れない症候群、他人が残っているとなんとなく事務所で居残る雰囲気になります。
スウェーデン人やその他の外国人は夕方ニコニコしながら「お先に!(実際にはHave a nice evening!)」とか言ってさっさと事務所を後にします。時には終業時間前に帰宅する方も多数、残っている日本人を不思議そうな顔で眺めてたりして。ちいさなことですが、この悪魔の言葉の禁止は意外と効果がありました。(「お先に失礼します」を「I’m sorry I’m leaving earlier than you」などとスウェーデン人に英訳したけれど定着しませんでした。なぜ「I’m sorry」なのか?って感じです。)
残業を減らす2(ワークライフバランス)
もう当たり前の言葉ですが、正直それまでは知らなかった「ワークライフバランス」について学びます。残業が常識的な自分たちの意識を変えることは重要です。長時間労働は悪だ・・・とまでは言いませんが、以下のTEDの動画視聴が推奨されます。家庭があるメンバーも多く、今までの働き方を振り返ってみたり反省してみたり。インパクトはありました。
残業を減らす3(どこまでも追い込む)
なぜ残業しないといけないのか?その原因を皆で突き詰めて分析します。IT技術者には大きく2つに分類される業務がありました。一つはシステムメンテナンスなどの定型業務(ルーチンワーク)、大体1か月をサイクルとして同じような業務を繰り返しています。もう一つはプロジェクト業務、多くのエンジニアは何かのプロジェクトに参加してその役割を担っています。
vs定型業務(ルーチンワーク):
主に定型業務を担当しているチームのリーダーや管理職に聞き取りが行われます。なぜ定型業務で残業が必要なのかをどこまでも追い込みます。月の業務の山谷が分析され、その山を崩す方策が話し合われる。要員が足りないのならシェアードITサービス(SITS)から時期を限定した応援体制が調整される・・・などなど。チームの責任者への啓蒙活動も同時に進められ部下に残業をさせないことが意識される。
vsプロジェクト業務:
主にプロジェクトマネージャー(PM)に聞き取りが行われます。PMはほぼ全員がSITSに所属しています。PMの上司(SITSの管理職)が直接PMに聞き取りします。PMは任されたプロジェクトの予算、納期、アウトプットに責任を持っています。上司から言われても自分のプロジェクトメンバーの残業を減らすことはそう簡単なことではありません。会話が重ねられ時にはプロジェクトのステアリング・コミッティの議長(SC・Chairman)なども交えてタスク分配の適正化、追加要員、納期の調整等々をどこまでも追い込むのです。
残業を減らす方策は単なる姿勢論や掛け声だけでは実現しません。組織のトップが強くリードして組織全体の目標として取り組んだ結果、徐々に効果が表れます。労働時間が短くなってきました。
自由な休暇取得
スウェーデン人を含む欧米人は夏(多くは7月頃)に3~5週間程度の長期休暇を取得します。どうやらEUレベルで決まっているそうです。そして夏以外にも個別に1~2週間程度の休みを複数回取得する習慣のある人が多い感じ。新年度が始まるとすぐ年間の休暇計画を立てて自分のoutlookを事前にブロックしてしまう人が多いです。そして立てた計画通りにしっかり休む。初めから予定しているから仕事へのインパクトは少ない印象です。
日本でも年3回(5月、お盆、年末年始)連休がありますね。それと労働組合の意向もあって日本でも月1日ぐらいは休暇を取れる雰囲気はありましたが、長期休暇は少しハードルが高かったです。
特に会社には製造部門があり工場の従業員は連休前後の日は休暇取得を控える・・が不文律となっていました(皆が休んじゃうと工場が止まっちゃう)。ホワイトカラーも遠慮して工場に合わせる。工場現場で働いている人たちがいるんだから仕事中に雑談したりお茶飲んだりするのもご法度・・なんて同調圧力があったりして以前は何だか変でした。
でもジョブロールが導入されSITSメンバーなどはプロジェクトを渡り歩くようになるとITエンジニアも計画的に休みが取れるようになってきます。もちろん長期休暇も。職種ごとに役割が違い、求められるノルマや責任も違うんだから、徐々に工場の人に気を遣うことも無くなりました。それぞれの職種にあった形で働き方を考え休暇を取れば良いんですよね。
1週間程度の休暇を取得して旅行などを楽しむ同僚が出てきました。その行動に触発されて(勇気づけられて)同じように長期休暇を取得する仲間が増えました。自分もとうとう1週間程度のまとまった休暇を取る習慣を身に着けます。周りとの同調圧力から解放されたのです。
育児休暇を取得した男性
そして育児休暇を取得する男性の事例がIT部門で発生します。今更感はありますが会社で初めての事例だったそうです。取得にあたり彼の上司が調整して、休暇期間中はインドから同じジョブロールの同僚がSSEPで日本に短期駐在、リリーフしてくれます。インド人技術者にもよい経験となり日本チームとのネットワークもできて皆ハッピーです。
ちなみに育児休暇を取得した彼は、赤ちゃんが夜中に起きた回数や時間、ミルクを与えたことなどをきちんと記録していて、復職後にお母さんがどれだけ大変なのかを体験談としてプレゼンしてくれます。ある意味ヒーローで、社内のいろいろなイベントでの講演依頼があり人気者になりました。
職場満足度調査
スウェーデングループでは定期的に職場満足度調査が実施されます。日本のIT部門では、当初この調査の意味がよく分からず、チーム内の意見の強い少数の人たちが「職場や上司に対する不満をぶつける良い機会だ」などと勘違いしていたこともあり、日本の結果は最悪となりました。
この満足度調査は、どうやら世界中の全ての職場で共通に実施されているそうで、日本のIT部門は最悪の部類だったみたいです。(後で聞いたところITだけでなく日本の多くの職場の結果は悪かったらしい。)スウェーデン人からは「日本は世界で一番やる気のない人たち」などと思われたそうです。
調査は繰り返し行われ、実施されてきたスウェーデン企業グループの数々の施策の効果にもより、この調査結果は大きく改善してきました。結局のところ自分たち自身が大きく変化した証だったと思います。
働き方が変わりました!
日本の会社で日々もくもくとITの仕事を行ってきた自分たち(純日本的です)の日常は、スウェーデン企業グループの一員となったことで(ついていくのに必死でしたが)、たくさんのことを学び、そして働き方が大きく変化しました。
会社の業績
正直不思議な事だったのですが、それまで低迷していた会社の業績がじわじわと改善してきました。昇給や賞与も前よりは少しポジティブな結果に?!従業員の前向きな行動変容は会社の業績にすごく大きなプラスとなる影響力がありました。
10. 仕事のやり方が変わる! |
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スウェーデンのインパクトが徐々に浸透してきます。グローバル共通システムに加え、リンクした業務プロセスがセットで日本のITチームにも導入されてきます。それにより自分たちの仕事のやり方が変わります。 |
11. 働き方が変わる! |
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自分たちの仕事のやり方が変わりました。働き方の自由度が増して、いろいろなことが可能になってきました。働き方が変わります。 |