8. Learning Opportunities(学習の機会)

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勤めていた会社が突然スウェーデン企業の傘下に。スウェーデン人やその他の国の人たちと一緒に働いて感じたことを記事にしています。
自分のジョブロールを極めたり、複数のジョブロールを渡り歩いてキャリアを上げていくためには、もちろん実践で経験を積むことが最重要ですが、加えて知識や技術を学習する機会を得ることも大切です。ここでは、グローバルで提供されていたLearning Opportunities(学習の機会)について記載します。
コーポレート・グループ・ユニバーシティ(CGU:企業内大学)の存在
グループにはCGUなる企業内大学が設置されています。「大学」と言っても一般的に言う「大学」ではなく、グループ全体の学習に関する考え方を策定して、グループ内の各部門、各分野における必要な知識・技術習得を目的とする研修プログラムを企画・実践する「人材育成部門」になります。
学習に関する3つの考え方
世界中にあるグループの拠点に、このCGUの事務所が開設されていて日本にも導入されてきました。CGUでは学習効果を上げることを目指して学習に関する3つの考え方を策定してましたのでここで紹介します。
考え方1:70/20/10 model(ロミンガーの法則)

CGUでは、まず「効果的な学び方」として70/20/10 model(ロミンガーの法則)を展開しています。自己のキャリアを向上させるための学習にて、効果を継続的に得る方法として3つの活動とその比率が定義されています。
- 何かを実際に体験する(70%)
- 他人と関わり人から学ぶ・まねる(20%)
- 研修を受ける(10%)
研修を受けることで学習効果を得ることができる比率は効果全体の10%とのこと。この数字は一見低いように見えますね。でも実は研修などで10%の学習効果と言うのは、非常に大きな数字なんだそうです。そのためCGUでは多様な研修プログラムが用意されています。
考え方2:Before/During/After approach to learning(学習前/学習中/学習後アプローチ)

学習プロセスを「学習前(Before)」「学習中(During)」「学習後(After)」の3つのフェーズに分け、それぞれの段階で適切な方法を取り入れることで学習効果を最大限に高める考え方です。日本で一般的に言う「予習/授業/復習」が大事、みたいな考え方と同じように思います。
考え方3:Kirkpatrick’s 4 levels of evaluation(Kirkpatrickの4段階評価モデル)

研修やトレーニングの効果を測定するための評価手法です。研修の効果を以下の4つの段階で評価することで、研修受講者の理解度や業務への適用状況、最終的な成果などが分析できます。
第1段階:反応(Reaction)
:受講者が研修を受けてどのように感じたかを評価する。
研修受講後にアンケートやフィードバックフォームを使って実施されます。
第2段階:学習(Learning)
:受講者が研修を受けてどれだけの知識やスキルを習得したかを評価する。
テストなどを行い実際に習得できた内容を確認します。
第3段階:行動(Behavior)
:受講者が研修で学んだ内容を実際に職場などでどの程度活用しているのかを評価する。
受講者の上司や同僚からのフィードバックを受けたり、受講者本人へのインタビューなどを行い確認します。
第4段階:成果(Results)
:最終的に、研修を実施したことが組織全体の成果にどのように影響したかを評価する。
生産性や売上、顧客満足度などの組織の評価指標が確認されます。
CGUが企画・実施する研修プログラム
CGUではスウェーデンの本社部門に各分野のアカデミー組織があり、それぞれの分野ごとに研修プログラムを企画・実施しています。研修には様々な手法が採用されています。従来からある、講師が実際に教室で授業をするクラス形式(In-classroom)から、ネットを使用したリモート形式(On-line)やeラーニング、TEDのような動画形式(On-stage)などなどが提供されています。

プロジェクト・マネージャー(PM)とIT関連の研修プログラム
それぞれの分野には個別のポートフォリオがあります。下記に参考までプロジェクト・マネージャーとIT関係の研修プログラムのポートフォリオを示します。
研修プログラムはそれぞれアカデミーで企画され世界中に展開されています。グループ内で働く従業員は、グループ共通(世界共通)となるCGUの研修を受講することになります。

PM研修が対象とするプロジェクトは、自分たちが働くITプロジェクトのみでなく、例えば新製品の開発プロジェクトなども含んでいるので、幅広くプロジェクトマネジメントについて学ぶことができます。
従業員は自分の業務とレベルに合った研修プログラムを受講できますが、多くのプログラムは有料となっていて、受講料が所属する部署にチャージされるシステムとなっています(もちろん無料のものもたくさんあります)ので、受講する際にはマネージャーの承認が必要になります。
でも部門ごとにそれぞれ教育予算が計上されているので、管理職は計画的に配下の研修受講機会を作ることができます。
リーダーシップ関連の研修プログラム
CGUはリーダーシップ関連の研修プログラムも提供しています。グループでは「リーダー」を大きく4つの層に定義していて、それらは「リーダーシップパイプライン」と言われています。それぞれの層に適した形で、様々なリーダーシップ関連の研修プログラムが提供されています。

リーダーシップ・パイプラインは大きく4つの層に定義されています。
・Emerging Leaders:
若手のリーダー層です。各部門で将来有望な若手リーダー層が選出され研修受講の機会が提供されます。
・Leading People:
一般従業員が部下のいわゆる課長さんの層です。部署を率いるリーダーとの位置づけです。
・Leading Leaders:
管理職が部下のいわゆる部長さんの層です。部門を率いるリーダーとの位置づけです。
・Leading Business:
ビジネスをリードするいわゆる役員さんの層です。会社レベルの活動を率いるリーダーとの位置づけです。
ちなみにリーダーシップ研修は、ジョブロールで言うラインマネージャー(LM)のみが受講対象と言う訳でなく、特定のジョブロールに関わらず広くリーダーになる人たちが受講対象になります。
よくリーダーシップ系の研修を部門単位で独自に企画して実施したりすることがありますが、考えてみると部門によりリーダーシップに対する価値観などが微妙に違うので、グループ全体で統一した研修にはならないケースが多いように感じます。
CGUの取り組みとして世界共通の研修プログラム(リーダーシップ研修など)を提供して、グループ内で統一した価値観を展開することを目指していたみたいです。
Learning Mindset(学ぶことへの意識)
スウェーデンでは、ジョブロールを極めたり、複数のジョブロールを渡り歩いたりして、自分のキャリアを上げることが一般的です。スウェーデンの企業グループでは、この個々人の活動を支援する意味でCGUなどが設置され、多様な学習の機会(Learning Opportunities)が提供されていました。
でも、たぶん、一番重要なのは各従業員が、それぞれに学ぶことへの意識(Learning Mindset)を高めることなのかなと思います。
日本のIT部門でも、各自が読み終えた書籍を職場に持ち寄り無償で自由に借りられる「共有本棚」などを設置したりして、徐々にこの学ぶことへの意識が高まっていたように思います。

「学ぶことへの意識は、好奇心から始まり変化を受け入れる!」ことと言われていました。自らのキャリアに責任を持ち、自らキャリア形成するために、意欲的に学ぶ・・・継続したいですね。
7. カルチャーショックは現実に(キャリアとジョブロール) |
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社内公募制度は、自分のキャリアに自由度と可能性を与えてくれます。でもここでは同時に起こった社内公募制度のインパクトについて記載します。 |